『覚醒剤をやっていた後輩。わからないもんだな』
もう5年ぐらい前になるかな。オレの仕事の後輩が覚醒剤で捕まった。
その時初めて「覚醒剤をやっていた」というのを知った。

もちろんオレはやったことがないし、オレの周りにもそんなヤツは1人もいなかった。
だから覚醒剤をしているヤツはどんな状態になってどんな症状があるのかさえも見たことがないから、オレの後輩がやっていたとは思いもしなかった。
その後輩とは仕事で1週間に2.3回は毎週会っていたんだけど、まったくわからなかった。
なんせぜんぜん普通なんだもん。
何か違うなと思ったのは、会うたびに少しづつ痩せてるなと思ったくらい。
だからといってそれを何か疑うなんてことはなかった。
だって毎日毎日夜中まで仕事してたからね。
なんでそんなことが分かるかというと、後輩の会社はオレの通勤の途中にあって、オレが遅くなった夜中になった時でも会社に明々と灯りが点いていたからだ。
しかもそれだけじゃなく、たまに日曜日や祭日に電話しても仕事に出ている時も何度もあったし、何よりも入庫している車の台数を見ればすぐにわかる。オレの方が断然キャリアはあるからね。
そのキャリアがあるオレから見ても、とてもじゃないが1人で捌けるような車の台数じゃなかったから。
後輩もオレと同じように、車の板金塗装工場を営んでいた。
「これだけありゃ1日24時間じゃ足りねぇなぁ」なんてよく話したもんだ。
そしてそんなある日、後輩は覚醒剤の使用で捕まった。
それをオレが知ったのは、捕まってから数時間後のことだった。
というのも、そのありすぎる仕事の何台かをオレに時々依頼してきてたんだ。仕事が回らないから。
そしてその依頼されてた車が出来上がったんで、その日の朝に持っていく約束をしてたんだ。
「今から車を持っていくけど工場にいるのか?」と言うために電話をするけど出ない。
その後も何回電話をしても出ないけど、今日の約束だからとりあえず持って行こうと後輩の所に向かったんだ。
そして工場に車を乗り入れると、従業員のおじさんがいたので「アイツはまだ来てませんか?」と尋ねると、どうも返事がおかしい。
「あ~、まだ~、あの~」と歯切れが悪いのを察したオレは「なんかあったんですか?」と問いただすとやっと「どうも捕まってしまったそうなんです…」と。
オレは「は?!何したんですかアイツ?!!」と尋ねると、それだった。
朝早くから後輩の嫁さんから従業員のおじさんに電話があり、かくかくしかじか、とのこと。
そりゃオレが何度も電話しても出ないはずだ…と。
そして結構な間拘留されて、裁判も終わり、初犯ということで執行猶予をお土産にもらって後輩は出てきた。
執行猶予が4年ぐらいだったかな、この前その期間が終わったそうだ。
その間ずっと嫌味を言い続けてやったよ。
「お前またやってねぇだろうな」とか、「注射器落ちてねぇだろうな」とか、「またやったらもう仕事引き受けてやらねぇからな」とか、まいろいろね。
一応後輩の中ではオレは怖い存在のようだから、あれからちょっぴり小さくなってるけどね。
それぐらいでちょうどいいだろ。
あれ以来仕事も毎日夜中まですることもないみたいだからもうそんなことする必要もないだろう。
最近はちょっと体系もふっくらしてきてるしな。
大丈夫だとは思うけど。
でもあれだけ付き合ってんのに、わからないもんだなぁ。
オレがそんなものに興味がないから気が付かないんだろうなぁ。
でも今後も注意して見といてやろう。
以上、『覚醒剤をやっていた後輩。わからないもんだな』でした。






