『職人はやっぱり気難しいのか?』
オレはもう30年近く自動車塗装の職人をしているけど、こんなオレでも、見習いの若い時期があった。
中学を卒業してすぐにこの業界に入って、右も左もバリバリの職人ばかり。
仕事のこともわからないのに、職人のことなんて知りもしない。
そりゃそうだ。ついこの前まで中学生だったんだから。
職人と言われる人たちが、気難しいのか、気は優しくて力持ちなのか、そんなことは知りはしない。
でもオレは、そんな職人と呼ばれる人たちとたくさん出会い、長い間一緒に仕事をしてきた。
同時にオレもだんだん年を取っていったけど…。
そんなオレが、よく言われている”職人はやっぱり気難しいのか?”
という問いにオレの出会いの中からではあるが、答えてみようと思う。
これからこの業界に入ろうかと思っている人からすれば一番気になるところだろうから。
大体ほとんどの人のイメージでは、”職人は気難しい”で出来上がってると思う。
でもオレの場合、そんなイメージもないどころか、そんな言葉すら知らない中学出たての坊主だったから、職人に対しても、そんな言葉にも、まったく何の先入観もないから、構えてもいなかったわけだ。
そんな状態のオレが、30年前に45歳や50歳だった職人と一緒に仕事をする日々の中で、職人を気難しいと思ったことがあるか?
ないのよ。
というか、付き合えば付き合うほど、何を、どこをもって気難しいと言ってるのかがわからない。
オレも順を追ってここまで来たわけだが、最初から言えばまずサラリーマンから「坊主」「若手」「中堅」「職人」そして独立して「社長」と来て、いろんな立場でいろんな人と出会ってきたわけだ。
その中には「お客」「下請けの業者」「材料、資材屋」「取引先の専務や社長」といる。
『気難しい』ってことで言えば、今挙げた中の方がよっぽど多く気難しいヤツがいる。
その点職人さんは難しくない。
来るのか来ないのか。
するのかしないのか。
出来そうかできないのか。
明日なのか今日なのか。
替えるのか替えないのか。
すべてがこんな感じ。
もうやってること自体がね、はっきりしないと始まらないし、始まらないと終わらないし。
で、オレ達は手を動かしてないと進まないし、口動かしてても進まないし終わらないし、間違ったり失敗したりするのよ。
間違ったり失敗したりすると、場合によってはそれまでの工程が全て台無しになって、またふりだしに戻ることもある。
それがあるから「いま話しかけるな」的な態度や言い方をすることはあるかもしれない。
そういうことから気難しいというイメージがあるんじゃないかな。
でもこれはどんな仕事でも同じような状況はあるけど、職人さんは羨ましいくらいそれをあからさまに遠慮せずに出すから余計に目立って、気難しいと思われるんだろう。
それからこれはオレも思ったし師匠も言ってたことなんだけど、「言葉」と「言い方」は知らないかもしれない。
かなりの年齢で若い時からこの仕事をやってきた人はやっぱり学歴がないということ。
オレみたいにね。
これはオレの師匠が言ってたことだけど、「昔はこの仕事は頭が悪いヤツがするような仕事だったが、今頃の車は鉄板にしても塗装にしても、頭が悪かったら出来んぞ」って言ってた。
そんな師匠とは今でも付き合いがあるが、やっぱり気難しくはない。
年を取って奥さんには少しワガママになったのと、頑固では、ある。
以上、『職人はやっぱり気難しいのか?』でした。




