『手に職をつける。つけた感想はどう?』
オレは自動車塗装職人。
中学を出てすぐにこの業界に入って今に至るわけだが、と言っても、勉強してこなかったから高校なんか行けるわけもなく、働くしか選択がなかっただけ。
オレみたいなのが行ける高校なんかどこにもないし行く気もなかったオレに、オヤジは言った。
”同じ働くんなら、手に職をつけろ”と。

中学を出たばかりのオレは別に車に興味があったわけじゃないが、オヤジの若い頃からの付き合いの、親父にとっては唯一頼れる”怖い先輩”に相談したそうだ。
その”怖い先輩”というのが当時ディーラーの所長をしていて、ちょうど職人の見習いを探しているという会社があるからと紹介をしてくれたのが、中卒から12年間お世話になることになる自動車板金工場だった。
この仕事をしてきて30年近くになるけど、いろんな会社があったし、使う材料も車もすごく変化してきたし進化もしてきた。
でもずっとやってきたからこっちも同じように変化してきたし知識も増えた。
大体の仕事は年齢とともにお呼びがかからなくなるが、職人と呼ばれる職種ではやっぱりその逆で、お呼びがかかる数が増えてくる。
まぁもっとも、そこそこの給料を持って帰れるようになるまでにかなりの年数を必要とするから若い子が続かずに、若い世代が少ないからってのもあるけどね。
でも40も半ばになって、こんなに声がかかるとは思ってもいなかった。
職人って言ってもいろいろで、そりゃ下手くそだったら声もかからないけどね。当たり前だけど。
結局、冷静に振り返ってみても「手に職をつけろ」ってことは昔から言われている通り、少しは有利にいられるようだ。
「手に職を」というのはなにも伝統工芸のそれやオレみたいな仕事なんかを指すだけじゃない。
美容師だって、パン職人だって、フラワーアレンジメントだって、プログラミングだって、ブロガーだって、要は似たようなもんだ。
何でもいい、夢中になって凝ってやれば、立派に「手に職をつける」ことになるとオレは思う。
中途半端が一番いけないんだわ。口ばっか達者になって。
今のご時世はどの業種もいろいろ厳しいだろうが、本物は必ず生き残る。
以上、『手に職をつける。つけた感想はどう?』でした。





